第18回 宮城県 八重樫仙台タンス金具工房様

負けたなんて、一度も思ったことないっちゃ。負けたなんて、一度も思ったことないっちゃ。

江戸時代の末頃に誕生し、宮城県の伝統工芸品に指定されている「仙台箪笥」。諸説あるが、武士たちが刀や着物などを納める身近な箪笥として愛用され、その後明治になると庶民の間でも人気が高まったと言われている。実用性、堅牢性だけでなく、引手や錠前に取り付けられる豪華な飾り金具が、仙台箪笥の大きな特徴。繊細かつ大胆な文様は息をのむほどの美しさで、国内はもちろん海外にも愛好者が多い。この金具の製造方法は、鋳型に流しこんでプレスされた「鋳造」と職人が一つひとつ手づくりで文様を打ち出す「鍛造」の2つがある。今回は仙台箪笥の飾り金具をつくる彫金師「八重樫仙台タンス金具工房」を訪ねた。

宮城県 八重樫仙台タンス金具工房様 | 2018.3.29

宮城県仙台市で、仙台箪笥の飾り金具をつくる彫金師を訪ねて。

今回訪れたのは宮城県仙台市にある、「八重樫仙台タンス金具工房」。祖父から父、兄、そして代表の八重樫榮吉氏と受け継がれ、同氏で四代目となる。彫金師として50余年という歴史を誇る八重樫氏だが、実は学校を卒業後、別の職業に就いていたという。「若かった頃は親父に反発していてね。同じ仕事をしたくなくて、ホテルのレストランに就職したんです」。住み込みの仕事だったため、両親とは4年間会わなかったが、ある日家に帰ると父親がとても老けていて、涙を流しているようにも見えたそうだ。「そんな時に“お前がこの仕事に一番向いている、やってみないか”と言われたんです」。最初は手伝いぐらいの気持ちだったそうだが、ある時考え方を正されるものと出会う。「用を頼まれて植木屋に行くと、そこの親父さんに100年も200年も生きている盆栽を見せてもらいました。その時、一つの鉢に根を張り長く生きる盆栽のように、私も同じ場所で一つのことに集中しながら生きてみたいと思ったんです」。悠久の時を感じさせる盆栽のように、仙台箪笥もひと時代を超えて受け継がれるもの。それを自分の手でつくりたいと確信したこの日を境に、八重樫氏は彫金師として生きる決意をした。