第13回 高知県 株式会社KAWAMURA様

希少な珊瑚と芸術性の高い技で、世界の舞台へ希少な珊瑚と芸術性の高い技で、世界の舞台へ

珊瑚というと、珊瑚礁をイメージする人が多いだろう。しかし元来、珊瑚と呼ばれていたのは宝石として使われる八放サンゴのことで、一般的に宝石珊瑚と言われているものだ。珊瑚礁は六放サンゴ(=造礁珊瑚)のことを指し、別物である。この宝石珊瑚の歴史は旧石器時代まで遡るほど古く、ダイヤモンドなどの宝石と同じように珍重されてきた。元々宝石珊瑚は、旧石器時代からローマ時代を経て長い間、地中海沿岸を中心に採取されていた。しかし江戸時代末期に土佐藩(現 高知県室戸沖)で良質な宝石珊瑚が発見され、以来それを豊富に採取できたことで、高知県は珊瑚加工品の生産が盛んな地となった。今回はこの高知県で企画からデザイン、加工、制作まで手がける、宝石珊瑚メーカー「株式会社KAWAMURA」を訪ねた。

高知県 株式会社KAWAMURA様 | 2017.7.10

高知県高知市で宝石珊瑚製品を手がける、株式会社KAWAMURAを訪ねて。

向かった先は、高知県高知市にある「株式会社KAWAMURA」。「血赤珊瑚」と宝石を組み合わせた、高級珊瑚ジュエリーのデザインから加工、制作まで行っている宝石珊瑚メーカーだ。珊瑚は大きく分けて「血赤珊瑚」「赤珊瑚」「桃色珊瑚」「白珊瑚」の4つに分類されており、中でも日本近海でしか採れない血赤珊瑚は、美しさや希少価値の高さから最高級の珊瑚となっている。同社はこの血赤珊瑚の美を存分に活かした作品を生み出している会社だ。しかし設立当初はこの路線ではなかったという。高知県は宝石珊瑚の産地。“高知の珊瑚”といえば、お土産の代名詞になるほど人気の時代があった。時代が変わるに連れ、全国で高級土産の人気に陰りが見え始めると、珊瑚も同様に衰退の道を歩み始める。「日本での人気が無くなり始めた頃、海外で珊瑚の人気が高まりつつありました。それで、世界で通用するレベルの製品を開発しようと決意したんです」と代表の川村裕夫氏は経緯を話してくれた。お土産品から高級ジュエリーへ。同じ珊瑚でも新たな分野への挑戦になる。迷いや不安はなかったのか伺うと「理屈ではなく、これしかないと思いましたね。勢いもあったかな」と明るい笑顔で答えてくれた。逆境を悲観するのではなく、新たな価値を見つけ出して活かす。取材を進めるに連れ、この川村氏のポジティブさは本物だということに驚かされることになる。