第24回 秋田県 なまはげ面彫師 石川千秋様

なまはげ面に恐ろしさと美しさを。なまはげ面に恐ろしさと美しさを。

秋田県男鹿市で、毎年12月31日の大晦日に行われている伝統行事「なまはげ」。「泣く子はいねが」「悪い子はいねが」と雄叫びをあげながら「なまはげ」が現れる場面を、秋田県民ではなくともテレビなどで見たことがあるだろう。一度見たら忘れられないほどのインパクトのある「なまはげ」だが、それはあの出で立ちの影響も大きい。顔はまるで鬼のような表情であり、片手には出刃包丁を持っている。そしてあの雄叫びだ。「なまはげ」が現れると子供たちは泣きじゃくってしまうのは当然。たとえ大人でも暗闇で不意に現れたら立ちすくんでしまうほどだ。今回は、この「なまはげ」の面を男鹿市で制作している、なまはげ面彫師「石川千秋」氏のもとを訪ねた。

秋田県 なまはげ面彫師 石川千秋様 | 2019.4.8

秋田県男鹿市でなまはげの面を制作している、石川千秋氏を訪ねて。

今回訪れたのは、秋田県男鹿市にある「なまはげ館」。なまはげ面彫師の石川千秋氏は同館で、不定期ではあるが手彫り工程を実演している。石川氏に話を伺う前に館内を見学していると、あるコーナーで視線を奪われる。何と100体以上のなまはげが展示されているのだ。しかも同じ顔のなまはげが一つとしてなく、全て違う顔。なまはげは一体ではないのか?そんな疑問を持ちながら、先ずは解説員の方になまはげとはどういうものなのか、話を伺った。「地元以外の多くの人に誤解されていますが、なまはげは鬼ではありません。“来訪神”なんです。年越しの晩に家を回って一年間の邪気を払い、そして新しい年の祝福を与えてくれるんです」と教えてくれた。鬼ではなく神様。根本から全く誤解していたことに改めて驚くと、やはり一つ疑問が残る。なぜ神様なのに、あの恐ろしい雄叫びをあげるのか?「なまはげの名前の由来は、“なもみ”です。これは、囲炉裏で長く暖を取ると低温やけどをしてできる、かさぶたのようなもの。囲炉裏の前にばかりいる怠け者を戒めるために、なもみを剥ぎ取っていたそうで、この“なもみ剥ぎ”がなまはげになったと言われています。あの雄叫びは、怠け者を戒めると言う意味もあるのです」。“悪い子はいねが、怠けているのはいねが”と戒めに入ってきたなまはげを、家主がなだめて酒と御膳でもてなす。子供達は、親のありがたみを痛感し家族の絆が生まれる役割も果たしているそうだ。